(本記事執筆当時)筆者が保有する3Dプリンタは、以下の2機種でした。
出来上がりのPrusa i3 MK3Sは Ender 3 Proの価格5倍!組み立てキットのPrusa i3 MK3SとEnder 3 Proでさえ、価格3倍!
そうすると知りたくなりますよね。
価格差5倍は妥当か?
そんなわけで、実際に印刷して調べて見ることにしました。
今後、この記事では以下のように呼称します。
- Prusa i3 MK3S → MK3S
- Creality3D Ender 3 Pro → Ender3Pro
MK3SとEnder3Proを比較する前提は?
印刷対象
今回の印刷対象は、定番の3DBenchy。
3Dプリンタ試すなら、まずこれを印刷するよねという代物。定番中の定番。
FDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層方式)の3Dプリンタが苦手な印刷箇所が詰まった印刷モデルで、品質の差が出やすいと言われていますね。
フィラメント
今回も使用したフィラメントは以下です。
▶ RepRapper 1kg ホワイト シルクPLA フィラメント(販売終了)
大きな3Dモデルでも最後まで安定して印刷できるPLAで、ファンになりました。フィラメントの品質が良いと差が付きにくいかもしれませんが、圧倒的なコスパの良さには替えられませんからね。
印刷の主な設定値
PrusaSlicerで印刷しました。下記以外はほぼデフォルトの設定です。
スライサー | PrusaSlicer 2.3.0-r2 |
ノズル温度 | 200℃ |
ベッド温度 | 60℃ |
レイヤー | 0.2mm |
サポート | 無し |
PLA印刷なら定番、かつ3Dbenchy向けの定番の設定でもありますね。つまり、まったく特徴の無い設定ということ。
MK3SとEnder3Proの比較結果は?
印刷時間
3Dプリンタ管理に使っているOctoPrintの表示内容で、その結果を確認できます。わずかに見え方や情報量の違いはありますが、出力性能に違いはありません。また、各3Dプリンタのプロファイルは異なりますが、スライサーの設定はほぼ同じ、印刷速度もまったく同じです。フィラメントも同じ。
これら2つの3Dプリンタを使って、ほぼ同じ状態で出力した結果は以下でした。


MK3S | 2時間3分:31秒 |
Ender3Pro | 2時間37分31秒 |
MK3Sの方が30分以上/27.6%高速だったわけです。2時間程度の印刷物なんでまだ差が少ないですが、1日かかるような大物では6時間以上の差になります。これは大きな差ですね。
印刷結果
できあがった印刷物について、制度を細かく確認していきましょう。
側面

かなりキレイですが、MK3Sは側面に大きな線が入っているように見えます。一方、Ender3Proも一見は良くできている見えるのものの、側面や船室部分に段がある、糸引きが多いといった難点がありました。船首部分にも段がいくつもついてますね。
正面
どちらも多少の糸引きは見られますが、うまく形状が印刷できていました。

ただし、船首の差が大きいです。MK3Sはキレイな一本線ですが、Ender3Proはヨレているのが分かります。真ん中の方には大きく線が入ってしまっていますね。
この差については、Ender3Proの船首部分を拡大した画像を見て貰うと明らかです。

ここまで来ると「模様かな?」とまで思ってしまうほど、くっきりと積層が出てしまっていますね。
気づきにくいですが、Ender3Proの方は船室部分の柱にバリができてしまっています。こういった細かい粗がけっこう目立つ仕上がりになってしまっています。
上面

上から見ると、一見すると差が無いように見えます。しかし、Ender3Proの甲板に横線が入ってしまっています。また、船尾の筒部分もギザギザしています。MK3Sも船尾側の甲板に、すこし線が入ってしまっています。
こんな感じで、Ender3Proはムラが多いです。しかし、MK3Sも完璧とは言い難いできだったりします。
底面

底面で比べると、その精度差は明らかです。MK3Sはハッキリ文字が読める仕上がりですが、Ender3Proは文字が読める仕上がりではありません。
もちろん、これはEnder3Proのベッドのレベリングが甘すぎるのかも知れません。一概には各3Dプリンタ特有の精度問題とは言い切れません。しかし、ここで精度を疑ってしまうほどにEnder3Proはベッドのレベリング調整が難しいです。
上手く調整できれば、キチンと精度は上がるかもしれません。しかし、徐々にズレれたりしますし、定期的に調整(キャリブレーション)する手間はバカにはできません。
振り返ってみると、そもそもEnder3ProはZ軸が1軸だったり、Z軸の固定が弱くてグラグラしていたり、ボーデン式(PTFEチューブを通してフィラメントをエクストルーダーに押し込む方式)だったり、します。つまり、Ender3Proは根本的に精度がでにくい要素がたくさん詰まっていたわけです。
そう考えると、MK3Sには精度が高まる工夫が詰まっており、Ender3Proが対抗するのは無謀だったよな…と感じざるを得ませんね💦
その他
MK3SとEnder3Proの違いは、価格や印刷精度だけではありません。実験した結果、以下の違いが判明しました。
- Ender3Proの方がわずかにフィラメントを多く消費する
- 出力中の騒音は、圧倒的にEnder3Proの方がうるさい(ファン+モーター音)
- 停止中はMK3Sは無音になるが、Ender3Proはずっとファンが回ってうるさい
- Ender3Proのフレームの角で怪我をしやすい
- Ender3Proはボーデン式、MK3Sはダイレクト式
- Ender3Proの方が液晶が大きい えとせとら
すべてMK3Sが勝る!というわけではなく、部分的にはEnder3Proが勝る箇所もありました。
MK3SとEnder3Proを比較した結果
本記事では Prusa i3 MK3S と Clearity Ender-3 Proについて、実機で比較しました。その結果は…
MK3Sの圧勝
価格以外でEnder3Proが勝る点はほぼ無い!と言い切っても良い結果でした。比較してしまうと、やはり粗が目立ってしまいましたね。
今回は組み立ての大変さは比較対象に入っていませんしね。
ただ、Ender3Proも十分に実用的なんです。実際使えるものが印刷できていますし。つまり、精度を求めなければEnder3Proでも実用的!です。
現場からは以上です。